魔女らしくない魔女。
魔女のお話でもしようか。
つい先程、はてなブログから「そろそろブログを書いてみませんか。」という内容のメールが送られてきた。
まんまと真に受け、私は魔女のお話をしようと思った。
丁度、目の前の席も空いたことだし、座りながらゆっくりと書いていこう。
魔女との出会いは、春の陽気に世界が浮き足立っていた頃のこと。
その魔女は、多くの魔女と同じように中年女性の姿をしていた。
(本当の年齢性別は、これまたほとんどの魔女と同じように不明ではあるが)
勇者が世界を救ったと安心したのも束の間、私は魔女に出会ったのである。
魔女は、濁った瞳をしていた。
濁りに濁ったその瞳は、ほとんど漆黒に近く、光の加減によっては濁っていないように見えることさえあった。
魔女と出会った時、私は直感的に彼女が魔女であると確信した。
大昔に出会った魔女のように「魔女」であることを誇りに思ってはいないようであった。
とは言え、魔女は魔女である。
怪しげな鍋をかき混ぜ、怪しげな言葉を使った。
私は魔女が何を考えているのか、全くもってわからなかった。
それは今でもそうである。
魔女が魔女らしくない魔女である、というのも私が混乱した原因かもしれない。
何にせよ、大昔に出会った魔女は、しわがれた声を持ち、箒に乗って夜空を飛んでいたのだから。
(ちなみにその魔女は、私の母のそのまた母の姉であった。つまり、私も...いや、これ以上は言うまい。)
そんな魔女らしい魔女しか知らない私は、この世界で出会った魔女が魔女らしくないことに違和感を覚えた。
男の胸では愛らしく懇願するのだろう。
安易にそう想像できる甘ったるい声を出すのも、魔女らしくはない。
とどのつまり、魔女らしくない魔女は、何故か私にだけもの言いたげなのである。
いつもいつも何かを言いたそうにしていて、魔女ならばぐさりと言ってもいいものであるのに、彼女は何も言わない。
そう!
全くもって、彼女は魔女らしくないのである。
つまり、私は何が言いたいのか。
魔女らしくない魔女が、私に何かを言いたそうにしていて。
その視線に晒される度、そわそわと落ち着かない気分になるのである。
「さようなら」のその言葉さえ、魔女は何かを秘めた瞳で見返すだけ。